病院のユリイカ/番外【電気焼き】

本日は耳鼻咽喉科の担当[ハンサム風](と私は秘かに呼んでいる)医師ではなく、別の人間が診た。
担当ではないから少しソフトではないかと思ったが、むしろハードだった。 入院中も診てもらったことがあるこの医師は、話し方や顔つきはもの柔らかだけれども、人の顔を見ると「手術は明日でしたっけ?」と聞く。「今日はいいお天気で」というのと同じに、手術の話題も単なる挨拶と化しているのだろう。
また「肉芽を焼きましょう」というから、薬品かと思ったら、金属の尖端を当てる。電気でジリジリと焼くのだ。ジリジリとした熱というより痛みを感じ、「いちちっ」と顔をしかめたら、「麻酔うちましょうか」と薬品と注射を持ってくる。
注射針の尖端を眺めながら、それもいやだと思ったが、麻酔なしで焼かれるよりはいい、と思って黙っていた。
病院というところはじつに野蛮なところである。
喉だから処置している様子は自分では見えないが、注射針を刺されたり、焼かれたりは、想像するだにいやなもので、ほんとうに脂汗をかいた。
またボスが来て、セッシで糸を抜いてくれたようだ。私の身体は体質的に糸に拒否反応を示しているらしい。「溶ける糸」だというが、そう簡単には溶けないらしい。だいたい溶けるから拒否しているのかもしれない。溶けるから抜糸もアバウトにしているのか。
抜糸が簡単なのはそのときはうれしかったが、こんなことになる可能性があるのなら、もっとていねいにしてほしかった。……というのは、詮無い愚痴である。 「これはだいぶかかるんでしょうかね?」と医師に聞くと、2週間から1か月くらいかかるケースもあるという。げげげ。思ったより長い。「悪循環で……」と医師は言ったが、どういう悪循環かは聞きそびれた。