パスワード地獄

記憶力は、人間精神の根源能力であるらしい。
記憶力は原料として、より高度なさまざまな精神力に変換される、という意味のことを、ルドルフ・シュタイナーは言っていたと思う。
アトランティスの時代には、大気は今よりも濃厚で、エーテルに満ち、人類は記憶力のエネルギーで飛ぶ機械を持っていた、ともいう。
オカルティックなビジョンは、詩やファンタジーよりも強烈だ。当然である。


ところで、記憶力の衰えがなかなかひどい。
いや、昔からよくなかったのだが。
それにしても。


これには、いくつかの解き方がある。
1.生命力、精神力全体が衰えている
2.精神力の回路が多岐化して、全体的に消費が拡大している。
3.年齢を経れば、細かい記憶ではなく、もっと全体をぼんやり見る力を発揮すべきだ、という人間のあり方
4.現代社会では、入力されてくる情報が多すぎる!


細かい説明は省く。以上の要素はそれぞれ当たっているだろう。


「パスワード地獄」という言葉を何かで見たときには、ほっとした。
同じことで苦しんでいる人がいる。
みんな平気かと思っていた。


ネット内でいったいいくつのパスワードを登録したのだろう。
なるべく簡単で単純なのを使い回そうと思っていたのがいけなかった。
最低の文字数が違うのである。
4桁のは決めているのがあるのだが、6文字以上とか指定があって、ほかはけっこうバラついてしまった。
うう…
そのときは、これでいい、と思うが、何ヶ月も何年も経って必要だ、と言われたりする。バスワードの必要は忘れた頃にやってくる。そのときには完全に謎になっている。


銀行カードでも誕生日はやめろ、電話番号はやめろ、という。
その上、なるべく同じ番号を使うな、と。


俺はパスワードは嫌いだ!
大嫌い。


ネットバンクのパスワードを忘れた。金がからむだけに、郵送で教えるという。
ところが、その間に引っ越してしまって、まず、住所登録の変更をしなくてはいけない。
住所変更も、ファックスで、保険証のコピーを送ったり、なんだかややこしい。
ところが、その手続きも止まってしまった。
なんだか止まった理由も忘れた。
2万ばかり入っていると思うので、いずれやらなければいけないけれども、面倒だ。放ってある。


なんかそういう事務や管理というのは、僕にとっては下賤なこと、苦手なこと、やりたくないことに属しているのだけれども、便利になったように見える世の中で、どんどんそういうことが生活に侵入してくる。


記憶力の悪い人間には、鬱陶しい世の中である。